日本透析医学会の2023年データによると、透析患者の死因の最多は、依然として心血管合併症(心不全20.4%、脳血管障害5.7%、心筋梗塞3.2%)であり、高血圧は、もっとも重要な危険因子です。少し前のデータになりますが、日本透析医学会の2005年のデータによれば全透析患者の74.5%が高血圧だとされています。

高血圧の持続は、心血管障害(心肥大、虚血性心疾患、心筋梗塞、狭心症など)や脳血管障害(脳梗塞、脳内出血)、腎機能障害、網膜症などの原因となるし、それ以外の体中の組織や臓器にも悪影響を与えます。一方で、透析中に起こる急激な低血圧への対処などもあり、透析患者の健康を守るためには、血圧を適正な範囲内に管理の必要があります。

透析患者の高血圧の原因

    体液量(細胞外液量)の過剰

    レニン・アンギオテンシン系の異常

    交感神経活性の亢進

    内皮依存性血管拡張の障害

    尿毒素の過剰

    遺伝因子

⑦ エリスロポエチン投与
透析患者の高血圧の原因としては、このような理由が考えられますが、の体液量過剰を是正することにより60%以上の高血圧が解消するといわれています。すなわち、適正なドライウエートにまで体重を移行すれば、60%の人が高血圧から解放されることになります。

 

 
  適正なドライウエート(基準体重)とは。

体液量が適切で、透析中に過度の血圧低下を生ずることがなく、長期的にも心血管系への負担が少ない体重のことで、左の条件を満たすものです。

  透析中の顕著な血圧低下がない

  透析終了時の血圧は開始時の血圧より高くない

  手先、足先にむくみがない

  胸部レントゲン検査で胸水や肺うっ血がない

  心胸比が50%以下。女性は53%以下である

    透析患者の正しい血圧

 家庭での測定を含めた一週間単位で評価

一般的には、週初めの透析前血圧値が14090Hg以下とされていますが、透析患者の体液量は、透析での除水により減少し、その後、次の透析までの間、体液量は増加をつづけます。このように体液量が周期的に変動すると、同時に血圧も影響を受け、除水後は低くなり、透析前は高くと周期的に変動します。このため、透析患者の血圧は、透析前後の測定値と家庭での測定(毎日の起床時、就寝時)を含めた一週間単位の変化や平均値をみて、評価をすることが必要になります。

 適切な血圧管理 血圧変動を抑える必要性

高血圧と並んで血圧変動が、からだに悪影響を及ぼす。皆様もよく経験される透析中の急な血圧変動は、倦怠感や強い疲労感をもたらします。また起床時から就寝時までの日中や一週間での血圧変動幅も大きいと生命予後が不良になるとされています。

高血圧治療

m  減塩を基礎として透析間の体重増加を抑制した上で適切なDW設定をおこなう。

m  必要量の透析が確保されることが前提条件

m  透析時間、回数、血液流量、透析膜などの透析条件を考える。

m  高齢者や導入前に動脈硬化がすすんだ人には、DWを厳格に設定することは困難。

m  それでも、目標の降圧が得られないときに降圧剤の投与

m  血圧の評価には、家庭測定を含めた1週間単位の血圧を参考にし、降圧薬を透析日には投与しないなど画一的な指導に終わらず工夫して、

一週間の血圧管理を良好に行う。


α1遮断薬 一般名 テラゾシン、ドキサゾシンなど

中枢性交感神経抑制薬 一般名 メチルドパ、グアナベンズなど

個々の患者さんの血圧変動に合わせて、これらの降圧薬の作用時間の長短、透析性の有無を加味しながら、組み合わせて処方されています。


    日常生活での注意点

【規則正しい生活をおくる】

l   十分な睡眠、休息をとる。

l   塩分制限と栄養バランスのとれた食事を適量摂る。

l   体重の増減に注意を払う。

l   適度な運動を心掛け、過労、ストレスを避ける

l   冬の風呂場や外出時など過度の気温差に注意する。

塩分制限の必要性

食塩8.2gを摂ると体重が1㎏増えます。これは、体液の塩分濃度を一定に維持するために、生理現象で口が渇き1000㏄の水を摂ることになるためです。

降圧薬治療

数多い各種の降圧薬がありますが、透析患者には、使用できないものや、使用量が制限されるものがあります。使用に当たっては、心肥大抑制など臓器保護効果のある薬が優先されています。

【よく使用される降圧薬】

カルシウム拮抗薬 

一般名 アムロジピン、ニフェジピン、アゼルニジピンなど

アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) 

一般名 アジルサルタン、テルミサルタン、ロサルタンなど

アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)

一般名 カプトプリル、エナラプリル、テモカプリルなど

β1遮断薬 一般名 ビソプロロール、アテノロール、メトプロロールなど